患者さんは60歳代の女性で、約8年前から慢性的な倦怠感や胃腸の調子が悪いと述べて、1年半前に当院を受診されました。
便秘気味で食事も摂れず、体重も減少していました。 以前、東京の有名なクリニックで栄養療法の治療を受けて体調が改善したものの、依然として倦怠感が取れず、スッキリしない状態でした。
過去の治療内容を聞くと、必要なビタミンやミネラルは充分に取られていたようです。そのため体調が向上したと考えられます。
しかし、なぜ完全には回復しなかったのか、さらに詳しく伺いました。
そして、肝心の腸内環境の調整や、慢性炎症の原因対策の治療はされていなかったことが分かりました。
健康に関する情報が手に入りやすくなった今、人々の健康への意識も高まっています。
症状が出た際、ただ薬をもらうだけではないアプローチを求める人も増えており、栄養療法が注目されています。
病院の治療だけでは解決しきれない症状にも、ビタミンやミネラルの補給で改善するケースが増えています。「メガビタミン療法」に関連する本もたくさん発刊されています。
しかし、栄養療法だけで十分な改善を実感できない方も実際にはおられます。
同じ治療を受けても、患者さんごとに効果が異なる理由は何だろうと、私は常に疑問に思っていました。
そして、ある考えに至りました。
栄養療法は、動きの鈍った歯車に潤滑油を補うようなものです。
病院の薬で効果を実感できない患者さんの中には、その“潤滑油”が足りない方がいるかもしれません。しかし、慢性炎症によって“歯車”が詰まっている場合、潤滑油を補うだけでは十分な効果は期待できません。
つまり、栄養療法の効果は体の状態によるということです。
今回の患者さんには、その原因を明確にするための検査を提案しました。
詳細は割愛しますが、主な異常として以下のような点が挙げられました。
① 腸内環境の悪化、消化・免疫機能の低下
② 腸内での悪玉菌やカンジダ菌の繁殖、及び毒素の排出
③ 解毒機能の低下、有害重金属の体内蓄積
これらの結果を元に、独自の治療を施したところ、約半年後にはそれまでどうしても取れなかった倦怠感が大幅に改善。1年半後にはほとんどの症状が消失しました。
この治療経過を患者さんの体験談としてお聞きしました。
8年前、私は便秘がひどく、腸の具合が悪く、病院で内視鏡の検査を受けました。その時は直腸炎と診断されました。病院ではマグラックスというお薬を処方されました。
当然ながら、マグラックスを服薬しても症状は一向によくならず、自分でいろいろ調べたところ、リーキーガットの症状と自分の症状がかさなる部分が多かったので、自分の体調不良は、カンジタ菌が以上繁殖している、リーキーガットと言われる症状ではないか?と思うようになりました。
病気以前は、私は身長155センチ、体重45キロでした。しかし、病気になってからは、食事が十分とれずガリガリに痩せて、38キロ位になりました。起きているのも辛かったです。しょっちゅうソファに横になって寝ていました。
いろいろな先生のところに行きました。分子栄養学に基づいた治療は効果はありましたが、なかなか思うように体調は改善しません。
それで、やはりリーキーガットの専門の先生に診ていただいたほうがよいと思い、1年半前に決心して小西統合医療内科を受診しました。
小西先生の治療を受けてからは、体調はかなり改善しました。食事が食べられないほど、体調が悪い日はほぼなくなり、徐々に体重が増え、今は43キロくらいです。
検査結果にも体調がよくなっていることが表れています。体調管理のため、私は定期的に分子栄養学の先生に検査をお願いしているのですが、肝機能がとても良くなっていると、分子栄養学の先生が驚いておられました。
小西先生の治療を受けて本当に良かったと思っています。
機能性医学がすべての患者さんに効果的とは限らないことは理解しています。
もちろん、機能性医学のアプローチでも改善しない方がいることは事実です。
このアプローチが100%の治療法であると考えているわけではありません。
機能性医学で改善しない場合、他の方法を探していただくのが良いと思います。
ただ、今回伝えたかったのは、栄養療法で効果が出ない場合でも、すぐに絶望する必要はないということです。
症状が改善しない背景には原因が存在します。その原因を明確にするためには適切な検査が必要です。しかし、日本国内での検査では限界があり、場合によっては海外での検査が必要となることもあります。
保険が適用されないこともあるため、費用の面での負担は大きいと感じる方もいるかと思います。これは現状の課題として残っています。
しかし、そのためと言って、原因不明のまま栄養療法のみに頼り続けるのは、時間と費用の無駄になりかねません。
健康の課題には個人差があり、一つのアプローチが全ての人に合うわけではありません。栄養療法や機能性医学は多くの人に効果をもたらしていますが、効果が得られない場合でも絶望せず、原因を探る姿勢が重要だと思います。
私は、たとえ難治性の症状があっても、本当の原因を見つけることができさえすれば、絶対に「健康になる道」はあるのだと信じています。
個々の状態を理解し、その上で適切な治療法やアプローチを選択することが、真の健康回復への第一歩となると思います。それぞれの原因を突き止め、最適な方法を見つけることで、より良い健康を築いていくことが可能だと思います。
YouTubeでも、栄養療法と機能性医学との違いについて説明しています。
どうぞご覧ください。
執筆者プロフィール

医療法人全人会理事長、総合内科専門医、医学博士。京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院、京都大学附属病院消化器内科勤務を経て、2013年大阪市北区中津にて小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。