「自分が近くにいると、なぜか周りの人が咳き込んだり、くしゃみをしたりする…」
そんな、気のせいとは言い切れない悩みを抱えていませんか?
もしかしたら、それは PATM(People Allergic To Me) と呼ばれる症状かもしれません。
PATMは、まだ医学的に明確な原因が解明されていないデリケートな問題です。
しかし、当院でこれまで1000人以上の患者さんを診察してきた経験から、腸内環境の悪化が症状と深く関連していると考えています。
特に、
- 腸管のバリア機能低下(いわゆるリーキーガット)
- 腸内での悪玉菌やカンジダ菌の増殖
これらが、PATMの原因物質を体内に蓄積・放出しやすくしている可能性があります。
腸内環境とPATMの関連性
1. 腸管バリア機能の低下と原因物質の蓄積
腸管漏出症候群(リーキーガット)では、腸粘膜の傷害により、本来なら分解されてから吸収されるべき物質が、未分解のまま血液中に漏れ出します。
この中には、食事由来の分子だけでなく、環境汚染物質や有害金属も含まれます。
- 環境汚染物質の蓄積
肝臓や腎臓で解毒されるべき物質が排出されにくくなり、皮膚からガスとして放出されることで、周囲の人に不快な反応を引き起こす可能性があります。 - 皮膚ガステストの結果
PATM患者では、トルエン・ベンゼン・キシレンなどの石油化学物質が多く検出される例が報告されています。また、メチルメルカプタンやヘキサナールなど、臭気や不安感に関係する物質も多く含まれます。
※これらがPATMの原因であると確定しているわけではありません。 - 重金属とデトックス
水銀などの重金属が、直接的にPATMを引き起こしているとは考えにくいです。ただ、体内の解毒機能を停滞させることによって、PATMの原因物質が体内に蓄積しやすくします。重金属はリーキーガットによって食べ物から吸収されやすくなるため、腸内環境を整えてリーキーガットを修復することが重要です。
2. 腸内での異常発酵と原因物質の放出
腸管内にカンジダ菌や悪玉菌が増殖することも、PATMの重要な原因の一つと考えられます 。
腸内で悪玉菌やカンジダ菌が増殖すると、食べ物の分解過程で異常発酵が起こり、通常では生成されない物質が作られます。
これらが皮膚から放出され、PATMの症状を引き起こしている可能性があります。

治療の糸口
治療の糸口
PATMは単なる思い込みではなく、腸内環境との関連が強く疑われる実際の症状です。
当院では、まず腸内環境の検査を行い、一人ひとりに合わせた治療計画を立てています。
- 自己判断で治療を始める前に、腸内環境をしっかり調べることが大切です。
- 便秘や腸内フローラの乱れを整えるだけでも、症状が軽減する可能性があります。
まとめ
PATMは、未解明の部分も多い複雑な症状です。
腸内環境を整えることが、PATM症状の改善にとって大切な第一歩であることをお伝えしました。
「腸内環境」という切り口からアプローチすることで、症状改善の可能性は十分にあります。
一人で悩まず、まずは専門の医療機関に相談し、ご自身の体の状態を把握することから始めましょう。
腸の状態を整えてもなお症状が残る場合、体内に蓄積した有害金属や解毒機能の低下が関わっている可能性があります。
次回は、この「重金属」と「解毒システム」に焦点を当て、PATMの背景にあるもう一つの重要な要因と、その改善方法について解説します。
執筆者プロフィール

医療法人全人会理事長、総合内科専門医、医学博士。京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院、京都大学附属病院消化器内科勤務を経て、2013年大阪市北区中津にて小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。