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[コラム] 遅延型フードアレルギー検査はやっても意味がないのは本当か?

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Google検索で遅延型フードアレルギー検査について調べると、上位記事の多くに、「うちでは、あえて検査をおすすめしていません」という内容が書かれています。

しかし、別のサイトでは「検査は有用だ」と書いた記事もあり、検索を進めるうちに、どちらが本当なのか分らない…と不安になってしまった方も多いのではないでしょうか。

この記事では、それぞれの立場の意見をまとめ、結局のところ何が問題なのかと、遅延型フードアレルギー検査の持つ「本当の意味」についてお話しします。

「遅延型フードアレルギー検査」に意味がないという先生の意見

一般的な病院で受ける「即時性フードアレルギー検査」では、IgEを測定し、アレルゲンを調べます。
それに対し、「遅延型フードアレルギー検査」ではIgGを測定します。

IgGは、食物アレルギーのない健常な人にも存在する抗体です。
そのため、検査をすすめない先生は、遅延型フードアレルギーの検査結果は単に食物の摂取量に比例しているだけで、IgG値をもとに食事制限を行うことで健康被害が起きる恐れもある、と主張しています。

実際に、日本小児アレルギー学会では「遅延型フードアレルギー検査は食物アレルギーを判定する上では意味がない」と正式見解を出しています。
むしろこの検査を元に小児が不要な食事制限をすることは正常な発達を阻害する危険性があるという見解です。

また、遅延型フードアレルギー検査は、現状保険が適用されていません。
そのため検査にはおおよそ3〜4万円程度かかることが一般的であり、保険診療も使えない高額な検査を受けることに意味はない、とされている先生もいらっしゃいます。

「遅延型フードアレルギー検査」を実施している施設の意見

それに対し、遅延型フードアレルギー検査を行っているクリニックのサイトには、「一般的な病院でIgE抗体を調べ、食物アレルギーがないと診断されても、潜在的なアレルギーが体調不良の原因になっている可能性があります」と書かれています。
IgG抗体も検査することで、さらに詳細なアレルゲンを特定できると訴えているのです。

「遅延型フードアレルギー」の症状を見るときに、気をつけないといけないのは、即時型のフードアレルギーと遅延型のフードアレルギーとでは、発症する時間帯と症状が異なるということです。

即時型アレルギーでは、直後から数時間以内に急なじんましんや呼吸困難などの症状が出るのに対して、遅延型アレルギーの場合は、数時間から数日経ってから、うつ病や無気力、疲労感、頭痛、下痢腹痛、場合によってはアトピーなどの症状が起こってくるということです。
一般的なアレルギー症状とは異なるので、その存在を知っていないと正確に診断することができません。

遅延型フードアレルギーは食べてすぐに反応が起きないため、自分の好物や、意外なものがアレルゲンであるケースも多くあります。
そのため、検査で見極めて、アレルゲンの可能性のある食材をしばらく食べないように指導されるのが一般的です。

「遅延型フードアレルギー検査」の何が問題なのか?

医療機関でも、これほどに意見の分かれる遅延型フードアレルギー。
いったい何が問題なのでしょうか。

それには、検査結果が必ずしも万能ではないことがあげられます。

・検査で反応が出ている食材でも、実は身体に何の影響も与えていない場合がある
・検査で反応が出ていない食材でも、食べることで体調が悪くなる場合がある

当院でも、下に述べる理由で「遅延型フードアレルギー検査」を行なっていますが、単純に反応の出ている食材を制限することはありません。

不要な食事制限をするリスクがありますし、根本的に治らない可能性があります。場合によっては、かえって症状がどんどんと悪化する場合もあります。
その意味では、小児アレルギー学会の見解は的を得ていると思います。

専門医のレベルでもこれほど意見が異なるのですから、受けた患者さんもどうしていいか分かりません。
当院を受診される方の中にも情報の洪水に飲まれて混乱している方も多くおられます。

「遅延型フードアレルギー検査」の、本当の意味

「遅延型フードアレルギー検査は意味がない」という意見の一番の問題点は、「アレルギー症状」というものを極めて狭い範囲で捉えているということです。
上にも書いたように、原因となる食材を食べて直後から数時間以内に起こった症状だけで判断しています。

つまり遅延型のように、しばらく遅れて、いろいろな症状で発症する場合を見落としてしまうという危険性があります。

一方で、遅延型フードアレルギー検査を積極的に行なっている場合も問題があります。
通常、遅延型フードアレルギーの検査を見て、「反応が出ている食材をしばらく食べないでください」という指導をされることがほとんどです。

確かに、食材を控えることで一時的に症状が良くなることはあっても、数ヶ月後に食べ始めると、症状が再発することがあります。また、食材を控えても全く良くならない場合もあります。

遅延型フードアレルギー検査で反応が出ている食材 すなわちイコール 食べてはいけない食材、ではないということです。

そう聞くと「やはり意味がない」と考える方が多くいますが、反応の出ている食材を「食べてもいいのか、それとも悪いのか」という観点から見ている限り、この検査の限界を超えることはできません。

遅延型フードアレルギー検査の本当の意味を知るためには、どうして遅延型フードアレルギーが起こっているのかを知る必要があります。

遅延型フードアレルギーは、腸管の粘膜が損傷を受け、その粘膜の「すきま」から血中に食材が漏れ出てしまうことが原因で起こります。
これをリーキーガット 症候群といいます。

参考:https://www.konishi-clinic.com/symptoms/food-allergy.html

遅延型フードアレルギーを根本的に治そうと思うなら、「食べない」ことではなく、腸管の「すきま」を塞ぐことを考える必要があるのです。
「すきま」がある限り、食べた食材は血中に流れ出しますから、たとえ長期間食べるのを我慢してとしても、意味はありません。

検査結果を見てどうすればいいのか?

すでに、この検査を受けて食事制限の指導をされている方は、この記事を読んでどうすればいいのかかえってわからなくなったかもしれません。

当院で、この検査をもとにどのように食事指導をしているかをお伝えします。

反応が出ている食材が全て症状を起こしているわけではないということを理解してください。
しかし、食材によっては、症状と関連している可能性はあります。反応の出た食材が症状と関係があるのかどうかを、一つ一つ検証していくことが大切です。

まずは、反応が陽性の食材を2週間程度控えて見て、自覚症状が変わるかどうかをチェックして見てください。
あまり変わらないようであれば、たとえ検査でどれほど反応が強く出ていても、関係ありません。食べる頻度が高いから反応が強く出ているだけです。

2週間程度控えて見て、症状が改善する場合は、その食材は「遅延型フードアレルギー」の症状の原因になっている可能性があります。
しばらくは摂取するのを控えたほうがいいです。そして、根本的原因であるリーキーガットを修復する治療を受けることをお勧めします。

遅延型フードアレルギー検査は、「アレルギー症状」の原因食材を知るのには意味がありませんが、リーキーガットの程度を確かめ、腸管の状態を把握するためには有効です。
そして、検査を受けるのなら、ただ単に「これは食べてはいけない」というのではなく、リーキーガットの根本的な改善についてアドバイスを受けることをおすすめします。

まとめ

遅延型フードアレルギー検査は、反応の出ている食材を「食べていいか・悪いか」という視点から見ていると、意味がないと分かりました。
この検査は、あくまで自分の腸内がどれほど痛んでいるのかを判断する材料のひとつです。

当院では、「遅延型フードアレルギー検査」を行うことで、「リーキーガット の重症度」を判断しています。
そして、反応の出ている食材の制限ではなく、「リーキーガット」の根本的治療を行うことで、遅延型フードアレルギーの反応が改善している方がたくさんおられます。

検査を受け、より根本的な治療を行うための目印にしてもらうことをおすすめします。



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