最近、SNSや書籍を中心に「4毒(小麦、乳製品、砂糖、植物油)」を徹底的に避けるべきだという主張が注目を集めています。
健康への意識が高まること自体は素晴らしいことです。しかし、現場で多くの患者さんと向き合う医師として、少し気がかりなことがあります。
それは、特定の食材を「絶対的な悪」と決めつけ、過度な不安や恐怖を煽る情報が氾濫していることです。
本当に食材そのものが「毒」なのでしょうか?
確かに、現代の小麦に含まれる多量のグルテンや、精製された砂糖の過剰摂取が、腸内環境を乱し、体内で慢性的な炎症を引き起こすきっかけになることは生化学的な事実です。
しかし、ここで立ち止まって考えてみてください。
世の中の9割以上の人々は、これらの食材を口にしてもアレルギーや深刻な不調を起こさずに生活しています。もし食材そのものが「毒」であれば、もっと多くの人が同じように体調を崩しているはずではないでしょうか。
症状は「氷山の一角」に過ぎない
機能性医学の視点では、目に見える症状はあくまで「氷山の一角」に過ぎません。
大切なのは、水面下に隠れている「体の土台」のバランスです。
例えば、小麦を食べると体調を崩すという方の多くは、食材そのものに問題があるのではなく、それを受け止める側である「腸内環境」がすでに乱れているのです。

当院での実例
当院でも、腸内環境を徹底的に整えることで、かつては「一生食べられない」と宣告された食材を、再び楽しめるようになった方が数え切れないほどいらっしゃいます。
特定の食材を制限することで一時的に症状が軽くなるのは、いわば「緊急避難」のための対症療法に過ぎません。
制限を一生続けることがゴールではないはずです。
「毒を抜く」ことに必死になるあまり、食べる喜びや心の栄養を損なうのは本末転倒ではないでしょうか。
水面下に隠れた「本当の原因」とは
では、「4毒」で体調を崩す方の体の中では、何が起きているのでしょうか。
実際に体調不良を訴える方を調べてみると、水面下に以下のような問題が隠れていることが多く見られます。
腸内環境の悪化
腸内フローラのバランスが崩れ、悪玉菌が優勢になっている状態です。このような状態では、小麦に含まれるグルテンや、乳製品に含まれるカゼインといったタンパク質を適切に消化できず、体に負担をかけてしまいます。
腸のバリア機能の低下(リーキーガット)
腸の粘膜に小さな穴が開き、本来なら体内に入るはずのない物質が血中に漏れ出してしまう状態です。これにより、食べ物の成分が異物として認識され、過剰な免疫反応を引き起こしてしまいます。
体の解毒機能の低下
肝臓での解毒機能や、メチレーション回路という体内の解毒システムが低下していると、糖質や植物油に含まれる物質を適切に処理できず、体内に炎症を引き起こします。
慢性的な炎症状態
体内ですでに慢性的な炎症が起きていると、「4毒」と呼ばれる食材が、さらに炎症を悪化させる引き金になってしまうのです。
「4毒」は引き金であって、根本原因ではない
ここで大切なことをお伝えしたいと思います。
「4毒」で体調を崩すのは事実です。それは否定しません。
しかし、問題はそれほど単純ではないのではないかと考えています。
おそらく、徐々に徐々に体の土台が崩れかけていたものが、ギリギリのところで何とかバランスを保っていた。それが、これらの食材を摂ることで体内環境が変化し、それが引き金となって一気に症状として表面化したのではないかと捉えています。
つまり、土台の部分がバランスを崩していたら、「4毒」を避けたとしても、いずれ他の何かで体調を崩していた可能性があるということです。
一生制限し続けるのがゴールではない
「4毒」を避けることで症状が軽くなるのは、いわば「緊急避難」のような対症療法です。
しかし、一生これらの食材を制限し続けることが、本当にあなたの望むゴールでしょうか?
食べたいものを我慢し続け、外食や旅行のたびに食材を気にしながら生活するのは、とても窮屈なことではないでしょうか。
当院でも、腸内環境を徹底的に整え、体の解毒機能を回復させることで、かつては「一生食べられない」と言われていた食材を、再び楽しめるようになった方が数え切れないほどいらっしゃいます。
重要なのは、水面上に見えている「4毒」を避けることではなく、水面下に隠れている「体の土台」を整えることなのです。
体の土台を整えるために —— 今日からできること
「抜く」前に「足す」
食物繊維を積極的に摂り、善玉菌を育てましょう。発酵食品も効果的です。繊維は体内の有害物質を抱え込み、排出を助けてくれます。
腸の粘膜をいたわる
ボーンブロスや、グルタミンといったアミノ酸は、腸のバリア機能を修復するのに役立ちます。
解毒機能をサポートする
ビタミンB群、マグネシウム、亜鉛といった栄養素は、体の解毒システムを円滑に回すために欠かせません。
慢性炎症の原因を探る
まずは専門的な検査で、今のあなたの体の状態を可視化することから始めてみてはいかがでしょうか。腸内環境検査や、有機酸検査などで、水面下の問題が見えてきます。
まとめ
「4毒」で体調を崩すのは、食材そのものが悪いのではなく、それを受け止める側の「体の土台」がバランスを崩しているからかもしれません。
見えている症状は氷山の一角です。水面下に隠れている本当の原因に目を向けることで、食事制限に縛られない、自由で健やかな生活を取り戻すことができます。
当院での治療を受けられた方の多くが、体の土台を整えることで、かつて避けていた食材を再び楽しめるようになっています。
「4毒」への執着を手放し、体の土台を整える。それこそが、機能性医学が提案する本当の健康への道なのです。
一歩ずつ、あなたの体という精密機械を一緒に整えていきましょう。
執筆者プロフィール

医療法人全人会理事長、総合内科専門医、医学博士。京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院、京都大学附属病院消化器内科勤務を経て、2013年大阪市北区中津にて小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。


