添加物を正しく理解して、うまく付き合うために
私たちが毎日使っている化粧品やシャンプー、歯磨き粉などには、品質を保つための「添加物」が含まれています。その中でもよく耳にするのが「パラベン」という防腐剤です。
「パラベン=危険」というイメージが一人歩きしていますが、実際にはどうなのでしょうか。
この記事では、科学的な視点からその作用とリスク、そして“恐れすぎず賢く使う”ためのポイントを整理してみましょう。
パラベンとは?
パラベンは、防腐剤の一種で、化粧品やスキンケア製品などに広く使われています。
細菌やカビの繁殖を防ぎ、製品の品質を長く保つという役割を担っています。
代表的な種類には、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどがあり、それぞれ抗菌力や安定性が異なります。
なぜ懸念されるのか
1. ホルモン様作用(内分泌かく乱の可能性)
パラベンは体内でエストロゲン(女性ホルモン)に似た働きをする可能性があり、ホルモンバランスへの影響が指摘されています。
2004年の研究では、乳がん組織からパラベンが検出されたとの報告があり、この結果が不安を広げました。
ただし、この研究は「因果関係」を証明するものではなく、検出=発がん原因という結論ではありません。
現在の科学的見解としては、「通常の使用範囲では安全」とされています。
2. アレルギーや皮膚刺激
まれにアレルギーや接触皮膚炎を起こすケースもあります。
敏感肌やアトピー体質の方は注意が必要ですが、一般的には多くの人が問題なく使用できる範囲の濃度で配合されています。
3. 腸内細菌への影響 ― 新しい視点
近年の研究では、パラベンが腸内マイクロバイオーム(腸内細菌叢)に影響する可能性が報告されています。
動物実験レベルでは、有益な菌の減少やバランスの乱れ(ディスバイオシス)が示されており、代謝や炎症との関連が注目されています。
ただし、人での明確な影響はまだ十分に解明されていません。
とはいえ、腸内環境を整えておくことが、こうした外的要因の影響を和らげる一助になると考えられます。
パラベンだけではない ― 添加物との「適切な距離感」
添加物に対する考え方は、パラベンに限らず他の分野にも共通します。
たとえば、ワインに含まれる防腐剤(亜硫酸塩・亜硝酸塩)もその一例です。
これらは、発酵や保存の過程で細菌や酸化を防ぐために使われています。
適切な量であれば安全性が確認されており、国際的にも使用が認められています。
一方で、「防腐剤フリー」や「ビオワイン」と呼ばれる自然派ワインは、添加物を極力使わずに製造されます。
ただしそのぶん酸化や劣化が早く進むこともあり、保存状態や輸送環境によって品質の変化が起きやすいというリスクもあります。
つまり、「防腐剤が入っていない=完全に安全」でもなく、「入っている=危険」という単純な話でもありません。
健康志向の高い人ほど、こういった情報に敏感ですし、時によっては過剰に反応する場合も見られます。しかし、重要なのは、その役割と限界を理解し、適切に選択することです。
これは化粧品でも食品でも共通して言えることです。
必要以上に恐れるのではなく、“添加物とうまく距離を取る”姿勢が、健康的な暮らしにつながります。
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規制と安全性の現状
各国ではパラベンの使用量に上限が設けられています。
EU、日本、米国などの主要国では、安全性データに基づき、化粧品中の濃度制限が定められています。
現時点の科学的コンセンサスとして、「基準内の使用では安全」とされていますが、複数製品からの累積的曝露や長期的影響については、引き続き研究が続けられています。
上手につき合うための実践ポイント
1. 成分表示を“知る”ことから始める
「パラベンフリー」という言葉に安心しすぎるのも注意が必要です。
防腐剤を抜いたことで、代替保存料が多く使われている場合もあります。成分を知ることが、安全な選択の第一歩です。
2. 製品数をむやみに増やさない
複数の製品を重ね使いすることで、同じ添加物への曝露量が増えることがあります。
必要なものを厳選して使うことで、肌や体の負担を減らせます。
3. 腸内環境を守る
発酵食品や食物繊維、オメガ3脂肪酸を意識的に摂ることで、腸内細菌叢を健やかに保つことができます。
腸の状態が整うと、外からの刺激にも強くなります。
4. 情報をアップデートし続ける
パラベンや添加物に関する研究は日々更新されています。
「古い情報」や「極端な意見」に流されず、信頼できる科学的データをもとに判断しましょう。
まとめ ― 恐れず、賢く選ぶ
添加物は確かに、大量に蓄積すると健康に影響を与えることがあります。
しかし、同じ量の添加物にさらされたとしても、体のバランスが整っていれば、それらを解毒・排出する力を私たちは持っています。
つまり、重要なのは「何を避けるか」だけではなく、「どうすれば自分の体が適切に働くか」という視点です。
そのためには、肝臓・腸・腎臓といった解毒システムが正常に機能するよう、栄養・睡眠・ストレスケアなどを含めた体全体のバランスを整えることが欠かせません。
これがまさに、「機能性医学」の基本的な考え方です。
恐れるよりも、自分の体を整えること。
それこそが、添加物とうまく付き合い、健康を守るための最も確かな道なのです。
機能性医学に基づいた治療方針については以下の動画で詳しく説明しています。
https://www.konishi-clinic.com/document/top.html
執筆者プロフィール

医療法人全人会理事長、総合内科専門医、医学博士。京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院、京都大学附属病院消化器内科勤務を経て、2013年大阪市北区中津にて小西統合医療内科を開院。2018年9月より医療法人全人会を設立。


